大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所吉井支部 事件番号不詳 判決

主文

被告人を罰金五千円に処する。

右罰金を完納することのできないときは金五十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人は、福岡県知事の認可を受けず、昭和二十七年一月八日から同年三月十六日迄の間、前後十六回に亘り、其の肩書住所に自ら設備した浴場において、大人一人金八円小人一人金五円の料金で、古賀フサ子外一般公衆を入浴させて、計金二万四千六百三十三円を徴収し、以て公衆浴場を経営したものである。

(証拠説明省略)

依て公衆浴場法第二条第一項第八条第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項、刑法第十八条、刑事訴訟法第百八十一条第一項を適用し主文の通り判決する。

弁護人諫山博は、本件公訴の根拠となつた公衆浴場法第二条並びに福岡県条例第五四号第三条は、憲法第二十二条の職業選択自由の規定に反し無効である。故に起訴状記載の事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないので、刑事訴訟法第三百三十九条第一項第一号により公訴棄却の決定あるべく、又被告事件が罪とならないときに該当するので、被告人は無罪である旨主張するけれども、憲法第二十二条は、国民の権利として職業選択の自由を「公共の福祉」の要請がある限り制限されうることを認めている。従つて公衆浴場法が許可主義をとり、無許可営業を処罰することが「公共の福祉」を維持するために必要であるならば、その制限は何等憲法第二十二条に違反するものではない。而して公衆浴場法第二条第二項に謂ゆる「公衆浴場の設置場所若しくは其の構造設備が公衆衛生上不適当である」こと、又は「其の設置の場所が配置の適正を欠く」ことは、憲法第二十二条に謂ゆる「公共の福祉」に反するものと認めるのが相当である。故に公衆浴場法第二条は憲法第二十二条に違反するものと云うことはできない。然らば被告人が公衆浴場法第二条第一項の許可を得ず公衆浴場を経営した以上、当然同法違反の犯罪を構成するものと謂わねばならない。尚前示福岡県条例は同法第二条第三項に基き公衆浴場設置の場所の配置の基準を定めたもので、此の規定も亦「公共の福祉」を維持するのに必要なものであり、憲法に反するものとは云えないのである。叙上の理由により弁護人の主張は何れも採用しない。(昭和二八年六月一日福岡地方裁判所吉井支部)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!